12月13日に、愛媛県松山市にて同講座を開催しました。今回は事例発表として、「よろず体験事務所をかしや(以下、をかしや)」の代表である菊間彰氏に事業内容や事業を創ることについて、ご発表頂きました。
「をかしや」は、愛媛県内のフィールド「しまなみ」を存分に活用したエコツーリズムや研修事業(しまなみインタープリター養成講座など)等の質の高いプログラムを参加者に提供することを心がけ、収益を上げながら事業に取り組んでいます。
菊間氏は神奈川県のご出身で、しまなみの素晴らしさに感動してIターンして来たのをきっかけに、「をかしや」を立ち上げられました。事業については、「知識で人は動かない。質の高い体験を提供することによって感動してもらえれば、動きにつながってくる。」と考え、体験を大事に「をかしや」の事業に取り組んで来られているそうです。
菊間氏が考える事業化のポイントとしては、「絶対的なスキルと経験」「『売れる』ことを常に考える」「人間中心」の3つを挙げられ、「をかしや」の事業を通して、それぞれについてご説明頂きました。
「絶対的なスキルと経験」については、をかしや設立以前に全国各地でインタープリテーションやファシリテーションの経験を積んできたということで、これが現在提供しているサービスにつながっているということです。
「『売れる』ことを常に考える」については、一般人を対象とすることで売り上げだけでなく広がりにもつながること、新しいことへのチャレンジとして今治のゆるキャラであるの「バリィさん」を3年前から起用していること、ヨソモノ目線で地域の良さを発掘すること、メディア戦略としてのプレスリリースや全国への情報発信・SNSの活用、などについてご紹介いただきました。
「人間中心」については、事業を行うにあたっては自然ではなく人を対象として事業を考える必要性についてご説明頂き、事業の柱として研修事業を行っていることをお話下さいました。研修事業としては社会人の基礎力を身につける講座として「しまなみインタープリター養成講座」などを実施しており、インタープリターが持つ「コミュニケーション能力」「企画力」「伝える力」を、自然を通して獲得するということをねらいとしているそうです。
これらの研修事業は、数万円規模の参加費であっても全国各地から様々な職種・年齢層の参加者やリピーターがいるということで、質の高いプログラムの提供によって事業型の取り組みが可能になっていることが実証されていると感じます。
事例発表の後は、NPO法人まちづくり支援えひめの前田眞氏によるファシリテートのもと、参加者との質疑を中心とした意見交換を行いました。事業内容や事業化について更に掘り下げ、菊間氏から以下のようなお話を頂きました。
・ 「をかしや」を組織化していない理由としては、必要性がまだないこと、組織では個人の良さが活かせないと考えていること、作業のスリム化などが挙げられる。フリーランスがチームを組んで取り組むという手法で事業を実施している。
・ 売れるポイントは、「楽しい」ということだと考えている。楽しさの中に学びや地域とのつながりを絡めている。
・ 多くの人は、参加者が喜んでお金を出してくれるものまで無料でやってしまっていることがよくあると感じている。
・ 有料にすることで参加者の質や意識が変わり、実施する事業内容も良くなる。
・ お金にならないことも取り組んでいる。これが、自分のスキルやネットワークづくりという投資になる。
・ 身近な川や公園をフィールドとしても何も問題ない。ポイントは、「それを「通じて」何を伝えるのか」についてデザイン出来ているか。
・ 地域の人であっても、圧倒的に質の高い体験であれば有料でもリピーターが来る。
・ 天候によるリスクについては、下見の時点で最悪バージョンのプログラムを考えており、また、これまでの経験と現場の状況判断で対応している。
・ 失敗した経験が役に立つ。
・ 「アイを大切に」「お互いから学ぶ」「失敗もOK」というグランドルールを設けている。
・ 地域の人とのつながりを大事にするよう心掛けている。
・ どんな事業をするにしても、「自分にとって何が大事なのか、自分にとって何が必要ではないのかが分かっていること」「自分の好きな仕事をする」ということが重要。
意見交換の最後には、アドバイザーの前田氏より菊間氏のお話や意見交換を振り返りながらポイントをまとめて頂きました。今回、事例発表・意見交換・ポイントの振り返りを通して、参加者それぞれが自分たちの事業と比較検討したりすることで、事業化の可能性や方向性を見いだせたのではないかと感じます。
さて、今回の講座をもって四国各県で開催した入門講座を終えました。事例によって違った視点があり、また様々なアプローチが行われていましたが、複数事例の共通点としては、「一般人が対象」「顧客・受益者目線」「常に新しいことを考える」「アンテナを張る」「地域との関係づくり」「企業や他団体との連携」「全国への情報発信」「会計を通した分析の必要性」などが挙げられそうです。
四国EPOにおける今後の事業型への取り組みのなかでも、今回の学びやつながりを活かしていけたらと思います。