12月11日に、高知市にて事業型の入門講座を開催しました。今回は、事例として社団法人西土佐環境・文化センター四万十学舎(以下、四万十学舎)の事業や運営について、専務理事である西本五十六氏よりご発表いただきました。
四万十学舎は、廃校となった小学校校舎を活用した体験型宿泊施設で、平成11年より運営を行っています。開設当初は、行政から校舎の改修や人件費等での補助がありましたが、現在は基本的には資金調達を含めた全てを自分たちで賄う必要があり、収益事業としては「宿泊事業」「自然体験事業」「委託事業」に取り組まれているそうです。
宿泊事業については、元々教室や校長室であった部屋を改造して宿泊出来るようになっています。自然体験事業では、カヌー体験、川漁師体験、星空観察などが行われており、宿泊者からの要望もあって「火を囲んで語る」という場も提供しています。この事業、「スタッフは考えもしなかったんですが、とても好評です。」ということでした。
発足から数年間は、あまり地元住民との交流はなかったものの、地域の方々の理解を得ることの重要性を認識し、スタッフから声掛けを積極的に行っていった結果、今ではお米や野菜を提供してもらったり、事業でも協力してもらえるような関係が築けているそうです。
自然体験事業では、四国外で自然学校の事業を行う組織との連携によって都会からの参加もあり、リピーター率も高いとのことでいた。
事例発表の後は、NPO法人まちづくり支援えひめの前田眞氏によるファシリテートによって、参加者との質疑などを中心とした意見交換を行い、四万十学舎のより深い部分について話を聞くことが出来ました。例を挙げると、
・ 経済的な点なことについては、給料が高いわけではないが、スタッフは手当てというよりやりたいことができるという理由で続いている。
・ 企業に勤めていた頃の月収よりかなり少なくなかったが、今のほうが幸せだと感じる。田舎では給与が少なくても何とかなる面もある。
・ NPOなどによくある担い手不足については、四万十が大好きな人たちがあちこちで出てきており、可能性がある。
・ この人がいなくなったら困る(対応出来なくなる)という状況があるため、解消していく必要性を感じる。
・ 顧客の目標設定は前年を参考にしている。
・ 提供するサービス単価は、これまでの経験的なところで決めている。今後の課題といえる。
などが挙げられます。
最後に、前田氏より事例発表や意見交換を踏まえて、四万十学舎の事業に関して以下のようなポイント等をご説明頂きました。
・ 組織の目標や取り組もうとしていることの成果目標が、スタッフ間で共有出来ている。また、組織とスタッフのミッションがうまく合致していることもあり、「しんどくてもみんなでやろうじゃないか」というスタッフ間のコミュニティがしっかり出来ている。
・ スタッフ間のコミュニティを作り上げてこれた理由としては、四万十や田舎暮らしの魅力というのがあるのではないか。
・ スタッフがしっかりとしたスクラムを組めており、収益を上げるということも含め、いろんな意味での基本になっている。「苦しいからやめる」とはならない。
・ 地元の人たちとうまく連携しながら事業運営出来ている。日頃の会話がそこに繋がっている。
・ 金銭的なメリットが提供できないと切られてしまうビジネス的なつながりではなく、志でつながっている外部の関連団体との結びつきがあり、そこを通してリピーターがある。
・ 課題として、会計収支から課題等を分析し、集客の仕方や目標設定、体験内容の決定が良い方向にならないかを考える必要があるのではないか。
・ 会計から分析する際に、ビジネス的思考だと良いところを落としていく判断になりがちであり、数字の読み方によって意思決定の仕方が変わってくるのでそこに気をつけていくと良いのではないか。それが事業を続けられたり、発展していくポイントになると感じる。
参加者からは、「収益を出すことは厳しいことを実感した」「年収が低くても食も住も困らないことに魅力を感じた」といったご意見や、課題として「資金繰り」「創業期の社会に受け入れられるまでの難しさ」といったコメントを頂きました。
事業毎に課題は異なりますが、今回の講座開催でも、事業化に必要な要素がいくつも抽出することが出来ました。