2月26日(土)、27日(日)の2日間にわたり、高知市のりょうまスタジアム(高知市陸上・自転車競技場)で「とさっ子タウン」が開かれました。(特非)NPO高知市民会議の主催で、一昨年9月に続き今回が2回目。小学校4年生から中学生まで約330人が参加しました。子ども同士のコミュニケーションの場や、地域への誇りを持てるようなきっかけづくり、そして子どもたちに社会のしくみを知ってもらうことが目的です。(写真は、マンガ家の職場で働く様子)
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子どもたちは市民登録局で受付した後、まちの約束事を30分学び、支度金19tosを受け取るのですが、これは税金1tosが引かれています。まちには、とさっ子新聞社、警察署、銀行、放送局、とさっ子電鉄、建設デザイナー、ペンキ屋など30もの職場があり、ダンボールで事務所や店舗のスペースが区切られ、看板がかかっています。高知ならではのマンガ家の職場もあります。子どもたちはハローワークの求人ボードから職業を選んで働き、給料を受け取って納税します。それぞれの職場では本職の大人(専門家)が指導。消防署の担架や選挙の投票箱など、本物の機材も使われていて、働く子どもたちの表情は真剣。「電車に乗りませんか〜」など、客寄せも一生懸命です。子どもたちのために一肌脱ごう!とやってきた専門家の表情もほころびます。また、起業したいという人はお店開設サポートセンターに相談して、新しい商売をスタートすることもできます。新しい職業が生まれると、まちの活気も高まります。
そして、子どもたちは稼いだお金でしおかぜ商店街で買物をしたり、レストランで食事したり、遊びのコーナーでゲームをしたり、箸拳道場に参加もできます。自分が働いて得たお金でパンを買ってくつろいだり、遊んだりする子どもたちの表情はとても満足そう。
さらに、市長選の立候補と投票が行われ(写真は、選挙管理委員会で市長選挙の投票をする様子)、新しい市長が生まれます。「前回は減税を公約した市長が当選し、減税が実施されました。その影響で今回は税務署の窓口が減るなど、まちに変化があったんですよ」と実行委員会2代目代表の大学生、廣井綾乃さん。これについては税務署の前に説明書が掲示され、窓口の1/4が閉鎖されていました。自分たちの選択によってまちの公共サービスがどのように変わるのかを、子どもたちに実感してもらう工夫です。
まちを陰で支えているのが、大学生、高校生、協力企業、NPO、行政職員など約90名が構成する実行委員会です。また、全体の仕組みやプログラムの企画などを担う「だんどりユニット」、起業や団体に協賛金や協力をお願いする「営業ユニット」、当日の食べ物を開発、手配する「くいしんぼユニット」など、6つのユニットがあり、進捗を実行委員会で共有して協議するしくみになっています。1年以上に及んだ当日までのまちづくりは、大人たちが企画・運営しているのです。「子どもたちにわかりやすく説明する表示を工夫したり、正しく伝えるために勉強も必要でした」と実行委員会の学生さん。「様々な立場や職業の人々と出合えて協力してもらえたことがうれしかった」とも。運営を担った学生・大人にとっても、コミュニケーションや合意形成の経験を積み重ねる機会となっています。ゴミの回収の対策、スタッフや来場者の食事の工夫、オリジナルグッズの開発による資金調達など、前回の体験を踏まえた大人たちのアイディアも次々と実行されていました。
とさっ子タウンのモデルはドイツの「ミニミュンヘン」とのことで、現在このような子どもが社会体験できるまちは国内で約30あり、まち同士の交流も生まれています。前市長も「こどものまち全国交流会」に参加したそうです。
子どもたちは2日間の市民生活でどんな手ごたえや気づきがあったでしょうか。自分たちが主体になって働くことや選挙に参加することで、まちにどのような変化が生まれたか…。とさっ子タウンはその答えを教えるのではなく、子どもたちが体感する場です。そして、まちは同日で終わりではなく、次回に引き継がれていきます。子どもたち一人ひとりの成長とも連動して、まちは進化するかもしれません。また、子どもたちが育って運営する側になるかも。未来のとさっ子タウンがますます楽しみです。
★四国EPOでは、とさっ子タウンの取組みの準備過程から当日の内容まで、すべてがESD(持続可能な開発のための教育)に通じることから、平成23年2月19日に高松で開催したESDフォーラムで、とさっ子タウンを事例として紹介していただきました。その様子はこちら→ESDフォーラム2011の開催報告